(いさ)
「本末転倒」

オリジナル民俗ものに出てくる、江戸時代の鯨捕りの青年。

右手に持っているのは鯨を仕留めるための銛。
手漕ぎの船団で行う古式捕鯨では、二艘の船の間に張った網に鯨を追い込み、網に絡まって動けなくなったところへ、船から何本もの銛を打ち込んで弱らせます。
頃合いを見計らって数人が海に飛び込み、その中の一人が鯨に取り付き、背中の鼻の穴の間を小刀で切って、綱を付けた木片を差し込み、その綱を二艘の船に繋いで、鯨を港まで引っ張って行くのです。
この青年は、その「鼻切り」役を務める「刺水夫
(さしかこ)」の一人。
「刺水夫」はとても危険な役目で、断末魔の苦しみに暴れる鯨の鰭や尾にはたかれたり、網に絡まって溺死する恐れがあります。
長髪なのは、万一溺れた場合、船から棒を出して髪に絡めて引き上げて助ける為なのです。

和歌山県の太地に伝わる古式捕鯨の話を調べているうちに、海坊主と捕鯨を絡めた話を描きたくなり、ラフコンテを描き始めたのですが、描いていくうちに褌一枚のごつい海の男ばかり出てくるのが嬉しくなり、ラフなのに必要以上に人物を描き込んでしまい、気が付くとストーリーを考えるよりも、人物のデッサンを如何に巧くとるかの方に気合いが入っていた私。うーん本末転倒〜。

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