酒呑童子
「願わくは花の下にて」

酒呑童子

願わくは花の下にて春死なん
その如月の望月のころ
                     (西行)


桜が咲く頃になるといつも思い出すのがこの歌。「桜の樹の下には屍体が埋まっている」と言う言葉と一緒に思い出しますね・・・。

もう随分昔に、「春に花びらの降りしきる桜の樹の根元で死んだら、私を想って哀しんでくれる者はいるだろうか?」などと考えながら描いたのがこれ。いつか屏風絵みたいなカラーイラストにしたいなと思っているのですが・・・。

小さくて判り辛いですが、左下に落ちているのは能面。既に今は亡き女人(ひと)をイメージさせるものとして描きました。
確か
当時は酒呑童子のストーリーを夢中になって考えていた頃で、「哀しんで貰えるなら酒呑がいいなあ」と思いながら樹の傍に立たせた記憶があります。でも、うちの酒呑にはいつもは描いていない角を、ここでは頭に生やしてあります。

酒呑童子茨木童子に限らず、鬼のストーリーを考える時には、「権力者に迫害され歴史の闇に葬られた人々」として描こうと思っているので、温羅(うら)両面宿儺(りょうめんすくな)と 言った他のうちの「鬼」どもにも、角を絶対に付けない事にしているのですが、上のラフでは後ろ向きの小さい姿だと誰だか判り辛そうだったのと、「死して鬼 に想われる」と言うイメージにかなり惹かれるものがあって、それをより強く出したかったので、あえて角を描いてしまいました。しかも2本も・・・(1本よ り鬼らしさが出ると思って)。
今見ても「やっぱりなんか違うなあ」と引っ掛かるものはあるんですが、まあこれはこれで特例と言う事で・・・。

・・・本当は「想い人に逝かれてしまい、花樹の下で愁いに沈む独り鬼」などと言う胸の軋む様な場面設定ではなくて、鬼にも幸せそうに降る花を愛でて欲しいなあ、と言う想いが多分にあります。
やはり昔、「鬼に似合う季節はいつだろうか?」と考えた事があって、秋なら「紅葉狩」の鬼女が似合うし、冬は「追儺」の眼に見えぬ鬼、夏はどっちかと言う と、鬼よりも河童とかの妖怪や幽霊が似合いそうだし・・・、などとあれこれ考えを巡らせた末に、「春の鬼」ってのはどうなのか?と考えてみたら、何だか ちょっと幸せそうに笑っている鬼の姿が頭に浮かんで、妙に嬉しかったので、以来、春になると何処かで鬼も少し浮かれているのではないか、鬼もたまにはそう いう想いをしてもいいじゃないか・・・、などと思ってしまうのです。

・・・うーん、何だか考えている事が上手く言えません・・・。済みません、どうも頭の回転が悪くて文章が思う様にまとまらないです。 夜中の2時過ぎに書いてるから余計駄目なのかも。

・・・で、そっちの「幸せそうな春の鬼」のイメージに近いのがこれ。

酒呑童子

これも1人で花降る樹の下に立っているイメージなんですが、1枚目のとは全然雰囲気が違いますね・・・。やはり昔の落描きなんですが。

こんな時、茨木とか金熊とか、他の鬼が一緒にいたら和やかな花見酒になりそうだなあ。どうせなら渡辺綱坂田金時たちも呼んで大宴会にしたら楽しそうなんだけど。その後、首を刎ねるとか言うのは無しにして。
昔話で鬼の宴会に呼ばれたのは「こぶとり爺さん」でしたか?私も呼ばれたいなあ、鬼と鬼のような人間どもの花見の宴の末席に。

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