暁の獅子

 

けだもののような人間よりも

心やさしい猛獣に

こんどは生まれてきたかった

そういって

右の手首を喰いちぎったきみ

左手にはしっかりとぼくの腕をつかんで

 

闇にさまよう生きものの

吐息のようになまあたたかく

ぼくらを包むアフリカの夜

波打つ君の髪だけが

金色にけむってまるで

獅子(ライオン)のようだね

バオバブの樹のむこう

暁の気配が風になる

禿鷹が空に舞うまえに

きみをサバンナのどこかに隠さなくては

 

きみを背負ったぼくの腕には

きみの願いがくっきりと痕を残して

琥珀色の夜明けのようにもえている

ぼくはひたいに少し汗をして

湿った土の匂いをかいでいる

 

―――――――――― 豪雨(スコール)

―――――――――― 雷鳴(サンダー)

たてがみを盾に

四ツ脚の内にきみをかばって

ぼくは一時(しばし)

心したたる沈黙のなか

 

 

打ち倒された草の上

ひとふさの髪を残して

雨とともに

きみは大地にしみこんでしまった

ぼくはそこにねそべって

腕の痣(あざ)をなめながら

金色の種が芽ぶくのを

お腹の下で待っている


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