微熱の街

 

鎖骨の奥

灼け焦げた女の髪を

(にかわ)で塗り固めたような

粘り着く声が

闇にうずくまる私を

夜通し弄(もてあそ)んでいる

 

ウイスキイに映る

湿った土色の顔

血流の絶えた胎盤のように

宵の街を圧し包む

肉色の雲

微熱に侵された目のように

(にじ)んだ光を放つ街灯

 

暴走する車の音

号泣するサイレン

私の心の血溜まりで

(わめ)きちらす獣(けだもの)

いつまで吐けば

その咆哮を止められるか

 

(そ)げ落ちた肩に喰いこむ嘲(わら)

人の背の冷ややかさを感じながら

肉離れした胸の中から

腐れかけた白い夢を

ナイフで掘じくり出そうと

私は密かに

考えている


ホームへ