遠雷
遠い雷鳴
雨の匂いのする肩
時を巻き込んでもどってゆく時計のネジ
ターンテーブルの上で跳び続ける針
*途切れたまま彷徨っている言葉がある
窓枠を濡らす風の飛沫
流される雲の残してゆく軌跡
気流の淀みをゆく旅客機の眠るような轟音
*あれは幼い頃ヒーローの乗っていた
銀色の戦闘機の亡霊かも知れない
妖しげに閃(ひらめ)く紫のオゾン
網膜に灼き付いた青白い陰影
*古い写真のネガのように
裏返しのままこびりついている
幽(かす)かな記憶が焼き直される
何処かで鍵の砕ける音
*焚きしめられていた時間のくゆりが
はじけ飛んだ扉から溢れ
首筋にまとわりついて
静かに体温を奪っていく
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頭上で炸裂したのは戦闘機の爆雷
時空がいま
頭蓋の形で凍りつく
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