あなたのようなひとが好き

あなたの全てを知らないから

あなたのこころの地下室(ちかむろ)

溜め込まれている猛毒の

上澄みを舐めただけだから

沈殿の味はあなたも知らない

だから私はあなたに恋した

 

黒い血溜まりにひたりながら

眼だけを出してうめいている

血の煮こごりをすくっては喰(は)

汚濁した言霊を餌づけしている

燐光の尾ひくあなたの味を

わたしの舌が知らないかぎり

あなたは

あなたのようなままで

在りつづける

 

ふつふつと醸(かも)される心の血糊を

あなたが咽喉(のど)から吐くまでは

あなたのような

ひとが好き


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