死顔(デスマスク)

 

三十センチ四方の粘土板に

黒色灯(ブラックライト)をあてると

燐光の中に浮き上がる

あなたの面影

 

墳墓に入れそびれた

飴色の骨をヘラにして

蒼ざめた輪郭を掘り出そう

 

―――― こんなに双眸は深かったか

こんなに鼻梁は優しかったか

そして唇はどんなに

鮮やかだったか

 

あの日

皮膚の張り付くほど

抱きしめて確かめた面影が

霜の降りたように

おぼろになっていく

 

眉間にひきつれを作りながら

土くれの中から

あなたの顔を掘り出そうと

削って

削りとって

 

握りしめた骨片が

掌に血の十字を刻む

 

血に染まる指で

粘土をかき分けていくと

ああ

裏側につきぬけてしまった

 

膝の上に飛び散った

粘土の肉をかき集めて

ひび割れた胸に抱きしめてみる

かつてあなたの大きな掌を

そうして愛したように

 

両の頬にあてられた

あなたの掌のぬくみ

 

両手に余る蒼ざめた粘土を

頬に額に塗りつけて

しめやかにあなたの

死顔(デスマスク)をつくろう


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