我儘(わがまま)

 

何が可笑(おか)しくて黄昏(たそが)れないのだ

そんな色の夕映えは許さない

 

逆降(さかふ)る雨と道渡る波

千の櫛刃で斬り裂いた街

葉陰で脅える雛鳥の

白い姿が霊(たま)と散る

そそけた毛並みの猫の仔が

毛毬のように転げ死ぬ

俺の荒ぶる魂に訊(き)

怒りで逆巻く碧眼(へきがん)の雲

貴様の探しものは此処にはない

海原渡り島を越え

成層圏を突き抜けて

漆黒の宇宙(そら)へ竜巻いても

(かえ)っては来ぬ

その呼び声と

瀑布(ばくふ)の如き涙に応える

くびれた吐息のほの白く

愛しきものはすでに無い

狂奔する貴様の足下で

千万の爪に引き裂かれ

とうに命の果てたのを

貴様は解りはせぬだろう

 

何が淋しくて夜明けないのだ

そんな色のままで永劫に居るのは許さない

 

どうせ貴様も同類(おなじ)なのだ

誰が同情などするものか

俺だって

我が身の内にいくつもの

颱風(Typhoon)を抱えて生存(いき)て来たのだ

これからも

涼しい顔して生存(いき)てやる


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