帝釈天(たいしゃくてん)(京都・東寺)

京都の東寺は密教の寺院なので、胎蔵界・金剛界の両曼陀羅が有名ですが、仏像群も素晴らしく、私はこの帝釈天が一番のお気に入りです。立像ではなく象に坐っていて、顔立ちが凛々しくて素敵です。

帝釈天は二臂(にひ)(腕が二本)で、独鈷杵(どっこしょ)(両端が尖った武器のようなもの)を持ち、を着ているものが多いです。

帝釈天は梵名をインドラといい、天空を神格化したもので、太陽神とも雨を降らす雷霆神(らいていしん)ともいわれています。仏教では、梵天(ぼんてん)と同じく仏法守護の主要尊となり、仏教的世界観の「欲界」の第二天の、とう利天(「とう」が変換できない・・・「りっしんべんに刀」という字です)の主とされています。梵天帝釈天は一対で置かれることが多く、東大寺二月堂の日光月光菩薩も、衣の下に鎧を着ていたりするので、実は梵天帝釈天だろうと言われています。

なお、「欲界」とは、三界(色界・無色界・欲界)のうちの一つで、食欲・淫欲・睡眠欲などを求める衆生の住む世界のことです。

私が仏像にはまるきっかけとなった、萩尾望都の漫画「百億の昼と千億の夜」では、主人公の阿修羅帝釈天と永劫に続く戦いを繰り広げています。ここでは阿修羅は少女のような姿で描かれていますが、これは興福寺の阿修羅像の影響ではないかと思います。密教の絵画や敦煌の壁画などには、恐ろしい形相の鬼神のような阿修羅が見られます。

仏教では、仏敵の阿修羅帝釈天との戦いに敗れ、仏法の守護神になったとされていますが、帝釈天が阿修羅の娘を強奪したのが戦いの発端になったという話もあり、「それじゃ阿修羅の立場がないじゃん!」と憤慨した記憶があります。

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