亜霊
「逆鱗」

前回の「遠雷」に引き続いて、心乱れながらの落描き。冷静になりたくて、もう何だかあれもこれも頭ん中ぐちゃぐちゃなのを随分抑えながら描いてはいるんですが、やっぱどこか棘がありますね絵に・・・。

「遠 雷」の酒呑童子のように長髪だと、生き物のようにうねる髪の流れで、ざわめく心の内を表す事も出来るんだけど、短髪だと難しいかな、と思いながら描き始め たんですが、怒ってるような顔に合わせて描いてるうちに髪が逆立って来て・・・それはそれで面白いんだけど、やはり動きが乏しい。で、衣の破れ端や魂の引 く尾のようなひらめく流れを描いてみたんですが、まだ物足りない。
何かこう、人物の後ろに縦のラインが欲しいなあ・・・と思って、ヒラヒラする流れをあれこれ描き足したものの、どれも今一つ。そうこうするうちに何だか髪やヒラヒラの感じが竜の髪やヒゲに似てるような気がして来たので、タイトルが「逆鱗
(げきりん)」になり、ならば右に竜の鱗で流れを作ろうと思って、結局それでまとめました。左に1、2枚、鱗を散らせば良かったかな。

「逆 鱗」とは、竜の喉元だったか胸元だったかに、1枚だけ逆さに生えている鱗の事で、不用意に触れると凄まじい怒りを買うんだとか。転じて「天子の怒り・目上 の人の激しい怒り」の意味となり、ついうっかりしてそういう人を激怒させてしまう事を「逆鱗に触れる」と言うようになったんですね。
私、この絵のタイトルを付けるために辞書を引くまで、「逆鱗に触れる」というのは、「天子か目上の人限定」だとは恥ずかしながら知りませんでした(^^;)同等もしくは目下の人を激怒させても、「逆鱗に〜」とは言わないんですね、そうすると。

こ の亜霊は外見は一応子供ですが、500年位前に死んだ子供が座敷童子になって、現代までずっとそのままの姿形でいると言う設定なので、年齢的には500歳 位になり、遙かに目上の存在になるわけで(笑)、こいつを激怒させたら「逆鱗に触れた」と言っても間違いではなさそう。

・・・ 年齢の事を無視して振り返ってみれば、昔は1枚どころか10枚位「逆鱗」を持っていて、事ある毎に相手を選ばず怒りを爆発させていた私。端から見れば、暴 れる竜みたいに手のつけようがなかったんじゃないかなあ(^^;)・・・当時の関係者の皆様、その節は大変失礼致しました<(_ _)>・・・って、此処で謝っても何にもならんだろう。
・・・それが此処まで生きて来るうちに、持ち堪
(こた)えられる限度を超えて何度も頭陀襤褸(ずたぼろ)になった所為か、みんな何処かへ落として無くして来てしまいました。
過去へ遡って拾って来る事は叶わないけれど、1枚でいいから、また逆さに生えて来て欲しいなあ。生やすにはどうすればいいんだろう。怒り方を忘れてしまっ た竜は、竜ではなくなってしまう気がする。いや何も自分が竜のように立派だとか凄いとかいう話では全然ないのですが(^^;)

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