温羅(うら)
「美しさの意味」

温羅

ラフの途中で止まっている漫画『桃童遺聞』に出て来る、渡来人の製鉄民の長・温羅(うら)。これはイラストの「温羅」を描いた時のラフなのですが、ペン入れしたものよりこちらの方が表情が上手く出ていて、ファイルの中に眠らせておくのはちょっと惜しかったので、落描きとして載せました。これ1枚では何だか淋しいかなと思い、色んな表情のを幾つか載せてみました。

温羅

何か考え事をしているような横顔。余り嬉しくない事のよう。

首 や腕の太さとか、胸板や肩の筋肉の厚さとか、顔を含めた骨格のがっしりした感じとか・・・もっと勉強して上手く描けるようになりたいです。そこに居るだけ で圧倒的な迫力と言うか、存在感のある人物。単に身体が大きければ良いのではなくて、内に秘めた怒りや優しさや哀しみを、その大きな身体全体から感じられ るような・・・。

温羅

普段は温厚な人ほど、本気で怒ると怖い。大切なものを護る為の、命懸けの怒り。そう言う怒りは美しいと思うのです。生きていると腹の立つ事は呆れるほど多いけど、分別の無い見苦しい怒り方はしたくないなあ・・・。

温羅

戦乱の世に一族の命運を背負う重責。失ったものへの哀惜、自責、悔やみ切れぬ想い。苦悩する姿すら美しい人を描きたいと思っています。容姿が「綺麗」と言うのではなくて、生き様の「美しさ」。・・・上手く言えないのですが・・・。

温羅

全てが終わった後、こんな顔で新しい道を一族と共に歩んで行ければ良いのでしょうが、彼は倭(やまと)崇神天皇(すじんてんのう)が差し向けた五十狭芹彦(いさせりひこ)と、吉備の王との戦の中で戦死してしまいます。

岡山県に伝わる「吉備津彦温羅退治」伝説では、悪事を働く「鬼神」の温羅が、吉備津彦五十狭芹彦)と一対一で熾烈な戦いを繰り広げた末に首を刎ねられる事になっていますが、私は崇神が砂鉄と製鉄民の奪取を目的に吉備へ派兵したと考えているので、五十狭芹彦が製鉄民の長・温羅を執拗に追いつめて殺してしまうと言う展開には疑問を感じます。なので、桃童遺聞』の中では五十狭芹彦の戦う相手はあくまでも製鉄民を支配下に置いている吉備の王で、温羅たちは吉備制圧後に手厚く保護する筈だったと言う事にしました。それが不測の事態によって温羅は殺されてしまうのです(諸般の事情で頓挫した為、未だそのクライマックスのラフは描けていないのですが・・・場面設定だけはしっかり頭の中にあります。頑張って描かなきゃ・・・)。

長くなってしまったので、この続きは落描きの「五十狭芹彦・温羅」へ。


おまけで1枚。温羅の義弟の王丹(わに)と。王丹温羅の死後、その遺志を継いで製鉄を吉備の一大産業まで拡大させます。

温羅・王丹


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